お役立ち情報病院の建設費とは?
坪単価、工事費の内訳・相場、コスト削減のポイント・事例を紹介

病院の建築費・建設費とは、病院の新築や増改築に伴って発生する、土工事・杭工事・躯体工事・仕上工事などの建築工事、電気や空調などの設備工事、外構工事などの費用を指します。

病院の建築費・建設費は病院建設プロジェクトにかかる費用の中でも大きな割合を占めるため、コスト最適化を実施することで、事業の成功につなげられます。

この記事では、病院の建設費の概要、病院の種類ごとの建設費用の相場、工事費の内訳とコストアップの要因、コスト削減に効果的なポイント、病院の建設費・コスト最適化事例などを紹介しています。

建設プロジェクトの工事費削減に関する具体的なソリューションを確認したい方や、専門家へのアウトソーシングをご検討されている方は、ダウンロード資料「コストマネジメントサービスのご案内」をあわせてご覧ください。

病院の建設費とは?

病院の建築費・建設費とは、病院の新築や増改築に伴って発生する、土工事・杭工事・躯体工事・仕上工事などの建築工事、電気や空調などの設備工事、外構工事などの費用を指します。

病院の建築費・建設費は病院建設プロジェクトにかかる費用の中でも大きな割合を占めるため、金額の概算をおさえつつ、コストマネジメントをすることで事業の成功につなげられます。

また、病院の建設プロジェクト全体では、建築工事だけでなく医療機器や家具・什器に関する費用も必要となります。さらに、病院の種別によっても工事費が大きく異なるため、事業計画の段階から病院建設費の概算を把握し、コストを見定めながらプロジェクトを進めることが重要となります。

建設費の算出方法である平米単価・坪単価とは

病院の建設費を簡易に評価する方法として、「平米(㎡)単価」や「坪単価」が用いられます。平米単価とは建物の床面積1平米(1㎡)あたりの建築費を表し、坪単価とは建物の床面積1坪(約3.3㎡)あたりの建築費を指します。平米単価や坪単価を用いて概略の工事費を試算することで、病院の建設費の予算の目安にすることができます。

病院の建設は、ほかのビルディングタイプと比べて設備工事の平米単価・坪単価が高い傾向にあります。さらに、特定機能病院や地域医療支援病院など、病院の種別や設置する機能によっても工事費は変動します。

平米単価・坪単価はあくまで建築費の概算をつかむための指標であり、正確な工事費を示すものではありませんが、概算を把握し指標を明確にすることで、コスト削減につなげられます。

病院の種類別の建設費用の
相場・目安とは

病院の種類に応じた建設費用の相場・目安について紹介します。高度医療を提供し、400床以上の病床を持つ特定機能病院や、かかりつけ医を後方支援し、200床以上の病床を持つ地域医療支援病院など、病院の種類別に目安となる坪単価と建設費への影響が大きいポイントを表にまとめています。

病院の種類ごとの建築費用の目安
病院の種類 概要 目安となる坪単価
特定機能病院
  • 高度医療を提供し、医療技術の開発・評価を行い、研修ができる病院
  • 400床以上の病床を持ち、厚生労働大臣によって承認される
  • 難易度の高い手術や、高度な医療技術の開発などを行う必要があるため、それに伴い医療機器、研究設備などにかかる費用が高くなる
120~220万円/坪

※昨今工事費の価格が上昇傾向にあり、着工できないケースが増えてきています。こちらで提示している坪単価は価格上昇する前の一般的な坪単価ベースで記載しています
地域医療支援病院
  • 医療機器などを一般病院や診療所と共同で利用し、かかりつけ医を後方支援する病院
  • 200床以上の病床を持ち、都道府県知事によって承認される
  • 高度な手術は行わないため、療養型病院として計画されることが多い。特定機能病院に比べると建設コストは割安になる
120~230万円/坪
その他の一般病院
  • 特定機能病院、地域医療支援病院以外の病院
  • 患者さんはまず、これらの地域密着型病院を利用することが多いといえる
  • 療養型病院として計画され、昨今は介護やリハビリに特化した病院も多く計画される。高度な医療機器を必要としないので、特定機能病院に比べると建設コストは割安になる
150~260万円/坪

病院の建設費用の内訳やコストアップに
影響するポイントを紹介

病院の建設費用の内訳やコストアップに影響するポイントについて紹介します。建設コストへの影響が大きい、土工事・杭工事・躯体工事、仕上工事、設備工事といった工種について、概要と工事費の割合について表にまとめています。

病院の建設費用の内訳
事業費の内訳・項目 概要 工事費の割合
建築工事
(土工事、杭工事、躯体工事)
  • 土工事(基礎や地下をつくるための地盤に関する工事)や、基礎、杭の設置、建物本体の躯体(鉄筋コンクリートや鉄骨)にかかる費用
  • BCPの観点で耐震性能を高く計画する場合が多い
25%~35%
建築工事
(仕上工事)
  • 屋根、外壁、建具、内装などに要する費用
  • 簡素な仕上げとなることが多いので、他の用途に比べると仕上工事にかかるコストは割安になる傾向にある
22%~34%
設備工事
(電気、空調、衛生、昇降機)
  • 照明、防災、給排水、空調換気、エレベーターなどの設備にかかる費用
  • 停電時・災害時などでも通常時の医療機能を保つために、自主設置の非常用電源を計画するケースも多く、その場合は設備工事にかかる費用は高くなる
30%~45%
外構工事
  • 敷地内の植栽や車路の舗装などにかかる費用
  • 病院の利用者や従業員用の駐車場が必要となるため、十分な駐車台数を確保できるように計画する必要がある
4%~7%
医療機器設備
  • 手術や検査で必要となる医療機器にかかる費用
  • 特定機能病院など高度な医療を提供する病院ほど多く必要となる
家具・什器・IT設備
  • 家具、什器、備品、IT設備機器などにかかる費用
  • 医療IT設備は今後さらに導入が進むと考えられる

病院プロジェクトにおける
建設コスト削減に効果的な4つのポイント

病院の新築や改修を行っていく際、さまざまな要因によりいつの間にかコストアップとなってしまい、予算内に収まらずスケジュールが遅延したり着工できないというケースが多くあります。

どのようなところに注意しながら進めれば、建設コストを最適化して計画を進めることができるのか、具体的なポイントを紹介します。

ポイント1:綿密な事業計画と適切なローリング計画を立て、医療機能を維持しながら建設プロジェクトを進める

病院の建て替え事業は、計画から開院まで数年以上かかります。そのため、将来の建設地周辺の患者数や医療圏などを見据えた上で事業計画を練り、適切な事業計画を立てる必要があります。同一敷地での建て替えの場合は、現在の医療機能を維持しながら建築、移転および解体を繰り返す、いわゆるローリング計画の構築が重要となります。

ローリング計画の詳細を検討していくにあたっては、安全性の確保、医療や設備の機能維持、患者やスタッフの動線の確保、騒音振動の有無など様々な検証が必要となりますので、そのノウハウをもった設計者、施工者の協力が必須となります。

ローリング計画のイメージ。既存の病院と同一敷地内での建替では、空地を活かして病院運営への影響を最小限にとどめられるよう段階的な建替プランを計画し、進めていきます

将来的な病院事業を見据えた上で建設工事にかけられる費用を算出し、現在の医療機能を維持しながら病院の建て替えを進められるよう、適切な事業計画を立てるようにしましょう。

ポイント2:他の用途と比べて複雑で検討事項が多いので、スケジュール&タスク管理で手戻りをなくす

病院建築は他のビルディングタイプと比べて、ステークホルダーが多く、要求される機能も多様で検討しなければならない事項が多いのが特徴です。開院予定日の厳守のためにも、スケジュール管理とタスク管理を適切に行うことが重要です。

病院内の各部門からの要求の整理や利害関係の調整など、調整や検討に時間が必要となりますが、その中でも全体最適を図っていくには、いつまでに誰が何をすべきかを明確にし、かつその進捗を管理することが重要です。

全体のスケジュールが遅れることは開院予定日の遅延にもつながります。開院予定日の遅延は、得られたであろう収入が得られない機会損失を招き、建設中のみならず開院後のキャッシュフローにも悪影響を及ぼすことになります。

病院建設プロジェクトのマスタースケジュールの参考イメージ。病院建設プロジェクトの全体スケジュールが可視化されることで、関係者の多い病院プロジェクトの進行がスムーズになります

病院建設プロジェクトでは、検討事項が多岐にわたり、関係者が多いため、各自の役割を整理するなど、タスクの管理を行う必要があります

病院建築は検討事項や調整事項が多いので、マスタースケジュールやタスクの分担票などを作成し、管理していくことが重要です。検討や工事の手戻りを無くすことで、予定スケジュール内での開院を目指します。

ポイント3:適切なプロジェクト運営体制を構築し、発注スキームを最適化する

病院建設プロジェクトでは、設計者、施工者だけでなく、監査法人や医療コンサルなどの協力が必要になる場合もあります。それらの多岐にわたる関係者と信頼関係に基づいた協力体制を構築することが重要となります。

中でも、建設する病院の設計と施工をどのような発注方式で行うのかは非常に重要な要素となります。昨今では、施工者が設計も行う「設計施工一括発注方式」のケースも増えております。施工会社の技術力を設計に反映しやすい、施工計画と一体で設計を検討できるなどのメリットがある一方、競争環境下での選定が難しい、工事費の妥当性を確認しづらいなどのデメリットもあります。また、設計の関わり方や参画時期の違いによっても更にいくつかの発注方式に分かれます。

建設費は病院建設プロジェクトの事業収支計画の中で最も大きな割合を占めるものです。上記の発注方式の検討から設計者、施工者の選定、コスト管理などを一貫して支援するコンストラクション・マネジメント会社を起用することも重要な選択肢の一つであるといえます。

病院建設プロジェクトでの発注方式のイメージ。
主にゼネコンの参画時期によって分類され、プロジェクトに合った方式を選択することでメリットを最大化できます

プロジェクト発足時に、竣工までを見通したプロジェクト運営体制の構想を練り、強力なチームの構築をすることが重要です。各関係者の特徴を理解し、プロジェクトごとに最適なチームを作りあげましょう。

ポイント4:設計・施工段階で継続的にコストモニタリングを行い、工事費の予算超過を防ぐ

病院の建替計画では、院内の各部門や各ステークホルダーから様々な意見、要望が寄せられます。また、医療機器やIT設備等の取り合いなど、検討すべき事項も多いです。設計段階、施工段階それぞれにおいて計画の内容が変更になれば当然建設コストも変動します。変更内容ごとにコスト変動額も把握し、工事費予算を超過しないかモニタリングをしていくことが重要です。

設計段階では各節目で設計者や施工者から概算見積を徴収し、その時点での工事費を確認することが重要です。予算と比較し、その乖離が大きいようであれば仕様の変更や規模の縮小などを行います。

施工段階でも、仕様の変更や不可抗力によるものも含め請負契約金額からの変更が発生することがあります。その際も増減見積を精査し、変更内容に間違いはないか、増減金額の内訳は正しいか確認することが必要です。

設計段階での変更対応のモニタリングの例。変更内容をリスト化し、不要な追加工事費を抑制しました

施工段階での工事費増減のモニタリングの例。
現場での変更に伴う工事費増減を継続的にモニタリングし、金額の妥当性を確認しました

設計・施工段階で継続的にコストモニタリングをすることで、工事費の予算超過を抑えることが可能です。

病院の建設費・
コストマネジメント事例

この記事を作成したPM/CM会社であるアクアがこれまでに参画した病院プロジェクトの建設費・コストマネジメント事例を紹介します。

病院の事例の概要とコストマネジメントのポイントをまとめています。アクアはさまざまな規模・種類の病院建設プロジェクトの支援実績を有し、建築コストに強みを持っています。

事例紹介:岡山県の病院の建設費・コストマネジメント事例

岡山県の病院の新築工事におけるコストマネジメント事例です。⽼朽化が顕著になってきた瀬⼾内市⺠病院施設を、耐震性に優れ、かつ将来の医療需要に合わせた機能を有する新病院施設とする病院建替事業でした。

設計業務を設計事務所JVに委託されていましたが、実施設計完了後に提出された設計概算工事費は、資機材や労務費の高騰などを背景に、当初予定の整備事業費と40%以上の乖離が生じていました。アクアは⼤幅な予算超過となった計画を⾒直し、コスト削減の支援を行いました。

岡山県の病院の建設費・コストマネジメントのポイント

岡山県の病院におけるコストマネジメントのポイント・効果は以下の通りです。

  • お客様の代理として実施設計見直し、施工者選定、スケジュール管理を支援
  • 事業継続への理事会の了解と議会の承認取付けのための説明資料作成を支援
  • 設計⾒積単価の⾒直し、不要な仕様の削除およびVE提案によるコスト削減を提案し、短期間で20%のコスト削減を実現
  • 過剰な設計・要求品質などを削減し、建設費を⼤幅に削減しながら設計品質を確保を実現

まとめ:病院の建設費・コストマネジメントのポイントをおさえて、
病院建設プロジェクトを円滑に進めましょう

病院の建築費・建設費は、病院建設プロジェクト全体の中でも大きな割合を占めるため、適切なコストマネジメントが重要となります。病院建設において、建設費・コストマネジメントの要点をおさえ、プロジェクトを円滑に進めるためのポイントは以下の通りです。

  • 病院の建築においては、建築工事だけでなく医療機器などの費用も考慮した概算工事費を把握することで、事業の安定につながる
  • 特定機能病院、地域医療支援病院など、病院の種類ごとの坪単価や相場をつかむことで、適正なコストを把握できる
  • 病院の建築費用の内訳やコストアップにつながるポイントを把握することで、適切な建設費用のマネジメントにつなげられる
  • スケジュールやタスクの管理など、病院建設プロジェクトのポイントをおさえることで、建築費用の最適化につなげられる
  • 病院プロジェクトに専門性のあるPM/CM会社を起用することで、事業費のコントロールや最適化が実現できる

アクアは、病院建設に対する専門性と高い技術力を活かしたコストマネジメントを通じ、お客さまの建物・施設の建設コストを最適化し、プロジェクトの予算超過リスクを低減いたします。概算工事費の算出や建設プロジェクトの予算立案など、病院建設の事業収支に関してお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。

病院建設費に関する
事例・リンク

サービスページ「建設コスト最適化・コストマネジメント」

アクアのコストマネジメントサービスについて、企画、基本計画、実施計画、施工などの各段階ごとに紹介しているページです。実際の作成資料を元に、工事費予算立案支援やVE提案など具体的なサポート内容をご覧いただけます。

サービスと費用(コンストラクションマネジメント)

コンストラクションマネジメント、保有施設のファシリティマネジメントなどのサービスと費用について紹介しているページです。工事発注時のゼネコン見積の精査・妥当性検証、月額定額契約での技術支援など、さまざまな状況に応じたサポート方法や費用を具体的に紹介しています。

お役立ち資料一覧・ダウンロード

建設プロジェクトに携わる事業主・発注者の方に向けて、建設プロジェクトのコストマネジメントに関するサービス内容や、コンストラクションマネジメントの基礎知識・導入のメリットをつかんでいただけるPDF資料をご用意しました。建設コストに関するマネジメントやCM方式の導入を検討中の方はぜひご活用ください。

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