品質マネジメントとは、発注者、事業主及び施設利用者の観点から建設プロジェクトにおける建築物の品質を定義し、発注者が求める品質を確保する一連のプロセスを指します。

近年、特に施工段階における品質マネジメントのニーズが高まっています。施工段階において、品質マネジメントを活用することで、工事段階における発注者の負担が低減するほか、品質・スケジュール・コストの最適化につなげられます。

この記事では、品質マネジメントの概要、品質管理との違い、品質マネジメントのサポートイメージ、工事段階における導入事例などを網羅的に紹介しています。

工事段階の工事費削減に関する具体的なソリューションを把握したい方や、専門家へのアウトソーシングをご検討されている方は、「建設コスト最適化・コストマネジメント」のサービスページをあわせてご覧ください。

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建築・建設プロジェクトの品質マネジメントとは?

品質マネジメントとは、発注者や事業主の観点から建設プロジェクトにおける品質を定義し、発注者や事業主が要望する期待やニーズを満たす一連のプロセスを指します。

近年、発注者側・施工者側双方で人手不足が続く状況ですが、建設需要は増加の傾向にあるため、施工段階でも技術力や専門性を補うために品質マネジメントへのニーズが高まっています。

また、昨今の工事費の高騰により現場予算の制約が厳しくなっている点、建設技能者の高齢化や離職などによる慢性的な人手不足が続いている点などから、施工品質の低下や工期遅延といった問題が顕在化されてきており、これまで慣例的に品質管理の多くの部分をゼネコンに委ねてきた発注者にとっては大きな問題といえます。

品質マネジメントは建設プロジェクト全体にわたるマネジメント手法ですが、本記事では特に近年関心が高まっている施工段階における品質マネジメントに焦点を当てて解説します。

施工者による品質管理との違いとは?

品質マネジメントと似た用語として、施工者における品質管理があります。施工者における品質管理の概要や意味、品質マネジメントとの違いなどを紹介します。

施工者における品質管理とは、品質・コスト・工程・安全の観点から、自分達が建設する建築・施設で瑕疵や不具合等が発生しないように管理することを指します。

本記事では、これらの背景や前提を踏まえ、「発注者の立場における品質マネジメント」と「施工者の立場における品質管理」の違いを明確にしながら、品質マネジメントという用語を使用しています。

品質マネジメントが必要になっている3つの背景

このパラグラフでは建設プロジェクトにおいて、品質マネジメントが必要になっている背景について、代表的なものを3つ紹介します。

品質マネジメントが必要になっている背景を知ることで、品質マネジメントの活用のイメージを持つことができます。

ポイント1:発注者側のマンパワー不足と技術力・専門性の補完ニーズの増加

品質マネジメントの必要性が高まっている背景には、発注者側のマンパワー不足や、技術的なスキルや専門性の補完ニーズの増大が挙げられます。

近年、人員不足が続く中で、収益に直結しない品質管理の業務に社内リソースを割くことが難しくなっています。

発注者がこれまで経験のない建物用途や大規模なプロジェクトを手がける場合、組織で培った経験やデータを十分に活用できず、CM会社などの第三者からノウハウを補完せざるを得ないケースも増えています。

こうした発注者側のマンパワー不足や技術力・専門性を補完するニーズの高まりを背景に、施工段階における品質マネジメント業務への依頼が増加しています。


アクアのマネジメント体制のイメージ。必要に応じて、お客様に不足している技術力や専門性を補完します

ポイント2:施工者側の人手不足に起因する、技術力や専門性を補完するニーズの増加

品質マネジメントが必要とされる背景の一つに、施工者の慢性的な人手不足により、技術力や専門性の補完に対する発注者のニーズが高まっている点があります。

建設業就業者数は慢性的に不足しており、高齢化による将来的な人員不足が見込まれるとともに、2024年に施行された働き方改革法案による時間外労働時間の制限により、マンパワー不足が加速している状況です。

このような建設業就業者数不足の状況にもかかわらず、建設投資額は増加の傾向にあり、発注者は施工者選定に苦慮しています。その結果、取引実績のない施工会社に依頼せざるを得ない状況も発生し、施工段階の品質管理をより慎重に行うためにも、発注者が外部から技術的な支援を求めるケースが増加しています。

このような背景から、発注者側でも技術力や専門性を補完する目的で、施工段階におけるCM会社の活用を通じた品質マネジメントへの関心が高まっています。

国土交通省の「建設業を巡る現状と課題」より。平成22年度に落ち込んだ建設投資額が増加に転じる中、建設業就業者数はピーク時から30%減となっています

ポイント3:プロジェクトの制約条件(工期・コスト)による品質低下の懸念

建設プロジェクトの品質・コスト・工期はトレードオフの関係にあり、タイトな工期やプロジェクト費用の増加が起因となり、品質低下につながるケースも見られます。

働き方改革による工期短縮や、災害によるやむを得ない設計変更などの影響で、施工スケジュールが非現実的なものとなり、スケジュールを優先した際に品質低下を招くことへの懸念が広がっています。

また、物価高やコスト上昇をおさえるために、従来よりも小規模なゼネコンに依頼するケースでは、施工者の専門性に期待できず、品質低下のリスクを懸念する発注者も増えています。

近年、大型プロジェクトの施工不良に関するニュースが注目される機会が増える中、こうした不安の高まりを背景に、第三者による品質確保の補完への関心が高まっています。

品質マネジメントのサポートイメージ

建設プロジェクトの品質マネジメントにおける、アクアの代表的なサポート内容の一部を紹介します。実際の帳票などから、具体的な支援内容のイメージをつかんでいただけます。

品質マネジメント計画の策定|施工段階の品質確保のための基準を策定

施工段階において発注者の求める適正な品質を確保するためには、品質マネジメント計画書を作成し、施工段階における役割分担を明確にすることが重要です。

アクアは、品質マネジメント計画書を作成することで、発注者・CMr・監理者・施工者がやるべきことや役割分担、責任区分などを明確にし、各社が定められた内容に従うことで施工段階での品質が確保されるよう支援します。

品質マネジメント計画書のイメージ。工事段階における品質確保のための基準作りを行い、各社が計画書に則って工程を進めることで品質を確保できるようにします

定例会議の出席や各種図面、監理者・施工者作成資料の確認|各種是正の助言・発注者の意思決定をサポート

建設プロジェクトの発注者は施工段階において総合定例、現場定例、各種分科会など様々な会議に出席し、各種図面や監理者・施工者から寄せられる工程表、モックアップなど様々な資料を確認する必要があります。

アクアは、総合定例会議や現場定例会議、各種分科会に出席し、発注者の要望を満たすために工事監理・施工管理状況をプロの観点から確認を行います。さらに発注者が行う総合図や設計変更事項リストなどの確認業務をサポートし、意思決定をしやすくします。

月次報告書のイメージ。各種定例・分科会に参加した際に確認・コメントした内容を毎月発注者に報告します
各種図面の確認のイメージ。発注者の要望をみたした内容となっているか第三者の観点から確認を行います

工程表の妥当性の検証・進捗確認|各種工事工程の確認および助言と工事進捗の確認

施工段階において発注者の求める品質を確保するためには、適切な工程計画が必要となります。無理のある工程では品質を適切に確保できない場合が多いため、工程表の妥当性を検証することで、施工段階での品質確保につなげることができます。

アクアは、専門家の立場から施工者から提出された各種工程表を確認し、妥当性を検証します。必要に応じて、施工者にヒアリングを行い、助言を行います。さらに、そのスケジュールに合わせて進捗確認を行うことで、品質を担保しつつ円滑なプロジェクト運営ができるようにサポートします。

各種工程表の確認のイメージ。発注者の要求事項を満たすために適切な工程が組まれているか確認します

工事費増減モニタリング・管理|施工段階における工事費増減・品質をモニタリング

施工段階では、発注者の要望による変更だけでなく、不測の事態や行政指導、テナント工事との調整による設計変更などが原因で工事費が増加する恐れがあるため、工事費のモニタリングが必要です。

アクアは施工状況をモニタリングし、工事費の増減や契約変更の妥当性の検証、変更に伴う品質の確認、ゼネコンへのヒアリングを行います。施工段階では、お客様の迅速な意思決定が求められる場面も多く、専門スタッフが技術的判断材料や助言を提供し、判断をサポートします。さらに、関係者間での情報共有を通じて、竣工まで総合的に支援します。

工事費追加増減見積精査のイメージ(左)、増減数量の確認資料のイメージ(中央)、工事費増減金額管理表(右)。追加工事費の抑制、妥当性の確認を行うことで、工事費を適切にコントロールし、増減数量や増減金額を精査することで、工事費に影響しうる計上漏れ・ミスの確認を行います。また、意思決定のための資料としても利用でき、事業者の迅速な判断をサポートします

現場巡回・各種品質検査立会|現場巡回による施工状況の確認と品質検査・性能検査の立会

施工段階の品質を確保するためには、図面や各種資料の確認だけでなく、必要に応じて適宜現場巡回を行うことで、未然に品質低下のリスクを防ぐことが重要です。

アクアは現場巡回による施工状況の確認を発注者の観点で行い、必要に応じて工事監理者や施工者へのヒアリングを行い、技術的な助言を行います。品質検査・性能検査においても同様に、提出書類のチェックや立会いを実施し、必要に応じて工事監理者や施工者へのヒアリング、技術的助言を行うことで、発注者の求める品質を確保できるようにします。

月次報告書のイメージ。現場巡回の際に確認した内容や是正を求めた内容などをまとめ、発注者に報告します

建築・建設プロジェクトにおける品質マネジメント導入事例

施工段階における品質マネジメントの導入事例をご紹介します。品質マネジメントが必要になった背景やその活用方法をご覧いただけます。

事例:宿泊施設の施工段階における品質マネジメントの活用事例

宿泊施設の施工段階における品質マネジメントの活用事例です。施工段階に入ってから工事の遅延やそれに対する施工者から合理的な説明がなされない状況が続いたため、発注者から相談を受け、アクアに品質マネジメント業務をご依頼いただきました。

アクアは総合定例会議に出席し、遅延が発生している工程に関して施工者に助言を行い、スケジュールが正常化できるようにサポートしました。施工者作成の工事報告書、工事監理者作成の工事監理報告書の内容を確認し、発注者視点で内容に問題がないかのチェックを実施しました。

各種工程を確認し、必要に応じて助言することでスケジュールの正常化を図ることができました。現場巡回や施工者・監理者から提出される書類を確認し、発注者の承認行為や意思決定をサポートすることで、プロジェクトの円滑に進めることができました。

品質マネジメント業務における月次報告書のイメージ。各種定例・分科会に参加した際に確認・コメントした内容や現場巡回や各種資料の確認内容を毎月発注者に報告を行っています

宿泊施設の施工段階における品質マネジメント導入のポイント・効果

宿泊施設の施工段階における品質マネジメント導入のポイント・効果は以下の通りです。

まとめ:建築・建設プロジェクトに品質マネジメントを導入し、プロジェクトの品質・工期・コスト改善に役立てよう

建築・建設プロジェクトに品質マネジメントを導入することで、工事段階におけるプロジェクトの品質・工期・コスト改善を行うことができます。この記事のポイントは以下の通りです。

アクアのCMは、品質マネジメントに対する専門性と高い技術力を活かしてお客様の建物・施設の品質を担保し、円滑なプロジェクト推進をサポートします。建設プロジェクトの工事段階における品質管理でお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。

プロジェクトマネジメントに関する事例・リンク

コンストラクションマネジメントとは?費用、契約、大手CM会社の特徴・選び方を紹介

建設プロジェクトの発注者の要望を的確に把握し発注者の支援を行うCM(コンストラクションマネジメント)方式について紹介しているページです。CM方式の概要、導入のメリット、CM会社の選び方、費用の算出方法や相場、CM活用事例などを紹介しています。

サービスページ「建設コスト最適化・コストマネジメント」

CMを活用して建設プロジェクトに最適な発注方法を選定しコストを最適化につなげるコストマネジメントのサービスを紹介しているページです。工事費予算立案支援、概算工事費算出、VE提案、施工者選定支援など、プロジェクトの各段階でのサポート内容をご覧いただけます。

サービスページ「プロジェクトマネジメント・コンストラクションマネジメント」

アクアのコストマネジメントついて、企画、基本計画、実施計画、施工などの各段階ごとに紹介しているページです。実際の作成資料を元に、工事費の妥当性検証や工事費予算立案支援など具体的なサポート内容をご覧いただけます。

サービスと費用(コンストラクションマネジメント)

アクアが提供するCMなどのサービスと費用について紹介するページです。建設プロジェクト全体をマネジメントするCM/PMだけでなく、工事発注時のゼネコン見積内容の精査や妥当性検証や、月額定額契約の技術支援など、さまざまなケースでのサポート方法や費用をご覧いただけます。