お役立ち情報工事見積書とは?
概要や見方、内訳・工種別の確認ポイント、建築費削減事例を紹介

工事見積書とは見積書の一種で、建設工事の合計金額、実施する工事の項目、材料費・労務費といった工事金額の内訳などが記載されている書類です。

一般的な備品や定価のある商品の見積書と異なり、工事見積書は項目やページ数が多くなっています。そのため、建設工事の発注経験が少ない方の場合、どのように解釈すべきか判断が難しいと感じられることも多いようです。

一見すると難しく思える工事見積書ですが、標準的な構成や内訳の記載方法などは共通しているため、ポイントをおさえることで工事費の根拠を具体的に読み解くことができます。

この記事では、建設コストに精通したプロが、工事見積書の概要、基本的な見方、工事費の単価・内訳の確認方法、ポイントや注意点、工事費の妥当性検証・コストマネジメントの事例などをわかりやすく解説しています。

工事費削減に関する具体的なソリューションを把握したい方や、専門家へのアウトソーシングをご検討されている方は、「建設コスト最適化・コストマネジメント」のサービスページをあわせてご覧ください。

工事見積書とは?

工事見積書とは見積書の一種で、建設工事を実施する際にかかる金額などが記載されている書類です。工事見積書には、建設工事にかかる総額のほか、建物が完成するまでに実施する各種工事について内訳や工事金額が記載されています。

工事見積書のイメージ。
全体の工事費のほか、その内訳であるさまざまな工事の明細が記載されています

工事見積書の依頼方法や作成の流れとは?

工事見積書は、建設する建物の設計図や建設現場の情報を元に作成されます。具体的には、以下の図のように、工事を依頼する発注者が施工者である建設会社に対し、建物の図面や見積条件等を提示するという流れになります(なお、設計段階における概算見積に関してはこの限りでなく、設計者あるいはCM会社などが作成する場合もあります)。

工事見積書作成の流れ。
工事を依頼する側である発注者は設計図書や見積条件を施工者に共有し、
施工者である建設会社はその情報を元に工事見積書を作成します

一般的な商品や規格品の購入と異なり、建物はオーダーメイドの仕様で計画され、実際に使用される現地で建設が進みます。そのため、工事見積書の元になる図面などの資料が詳細であることで、実際の工事費とのズレが低減し、工事費の妥当性の詳しい検証も可能になります。

工事見積書はページ数や項目が多く一見複雑に感じられますが、標準的な書類の構成をおさえ、工事の内訳を確認することで、ゼネコンとの交渉などの際の基礎資料としても活用できます。

工事見積書の内容とは?
標準的な書式の構成を紹介

工事見積書の標準的な書式を元に、基本的な内容や構成について紹介します。

標準的な工事見積書は、見積書表紙・見積内訳書・見積条件書という、3つのパートで構成されています。それぞれに記載される内容の違いなどを把握することで、工事見積書の概要や全体像をつかむことができます。

個別の工事費については、この記事の「見積内訳書の確認方法とは?単価の記載方法・分類を解説」にて具体的な見方などを紹介しています。

見積書表紙|工事全体の見積合計金額などが確認できるページ

見積書表紙には、工事の概要が分かる情報が記載されています。具体的には、建設工事の合計金額、工事名や建設場所、見積作成者の氏名や連絡先などが挙げられます。

工事見積書の表紙のイメージ。
工事の合計金額や基本的な情報が記載されており、建設工事の概要がつかめます

また、工事見積書の書式が国土交通省が公開している「公共建築工事見積標準書式」をベースにしている場合などには、民間工事の工事見積書にも建設作業員の社会保険料である法定福利費が記載されていることがあります。

見積内訳書|工事の合計金額の内訳明細が確認できるページ

見積内訳書は、工事費の総額の根拠である個別の工事の明細が記載されており、項目が多く数十ページ以上に渡る場合もあります。具体的には、仮設工事、躯体工事、設備工事など実際に行う工事の大きな分類ごとの具体的な工事項目について、材料や工事内容、単価、費用などが記載されています。

工事見積書の見積書内訳のイメージ。見積合計金額の内訳明細である、
工事項目ごとの材料や工事内容・数量・単価・金額などが記載されています

また、工事の単価が、「複合単価」と呼ばれる材料費や作業員の労務費などがあらかじめ含まれた金額となっている場合があります。複合単価は一見するとその内訳がわかりにくくなっていますが、確認方法をおさえることで、より詳細に工事費の妥当性が判断できます。

複合単価については、この記事の「見積内訳書の確認方法とは?単価の記載方法・分類を解説」にてより詳しく紹介しています。

見積条件書|工事見積の内容が発注者提示条件を満たしているかなどを確認できるページ

見積条件書とは、ゼネコンがどのような条件を元にして見積を作成したかがまとめられている書類です。具体的には工期、施工範囲、根拠となる設計図書名などが明記されています。

工事見積書の見積条件書のイメージ。発注者から提示された工事条件に対して、
見積り時に想定した工事範囲や施工条件などが記載されています

見積条件書は、建物や工事に対する発注者要望が適切に反映されているかや、実際の工事について技術的にどのような工法が取られるかなどを具体的に確認できます。

また、工事車両の駐車場所や想定する搬入経路、建設現場の電源の確保方法など、施工計画に無理や無駄がないか確認することでリスクの予防にもつなげられます。

工事費・工事価格の構成とは?

工事費・工事価格とは、個別の工事にかかる費用に各種経費が加わった価格です。具体的には、建築工事や設備工事、外構工事などの各種工事の費用に、諸経費が加わった金額が、工事価格となっています。

工事費・工事価格の構成を表した図。直接工事費と共通仮設費に、
建設会社の諸経費が上乗せしてある金額が、工事費・工事価格となります

建物を作るのに必要になってくる費用には、実際の工事にかかる費用となる直接工事費と、実際の工事に直接的には関わらないけれど、工事全体を進めるために必要になってくる共通仮設費があります。

建物を作るのに必要となる直接工事費と共通仮設費に、建設会社の諸経費が上乗せしてある金額が、工事費・工事価格となります。この諸経費は、さらに一般管理費と現場管理費と分けて工事見積書には記載されることが一般的です。

各費用について
直接工事費 工事に直接かかる費用で、建築工事、設備工事、外構工事などの個別の工事を全て合わせた費用。工事の材料費や職人の労務費、機械費なども含まれます
共通仮設費 工事に直接的には関わらないが工事全体を進めるために必要となる費用で、工事の現場事務所や仮囲のフェンス、仮設電気水道代などの整備費用になります
現場管理費 工事現場を管理するための費用で、現場監督の給与や交通費、工事に対してかける保険料などが含まれます
一般管理費 建設会社の維持管理や運営のための費用で、建設会社の本社や営業所に勤める社員の給与や、家賃・水道光熱費などになります

このように、工事価格は、個別の工事にかかる費用に各種経費が加わった価格となっています。工事費・工事価格の構成を知ることで、工事見積書の作成の背景がわかり、全体像をつかみやすくなります。

見積内訳書の確認方法とは?
単価の記載方法・分類を解説

見積内訳書に記載されている各種工事費の内訳を理解し、工事費の妥当性を判断するためには、工事の種類に応じた単価の記載方法を押さえておく必要があります。

一般的に各種工事費は、さらに材料費・労務費・経費の3つの費用におおむね分類できます。この3つの費用は、見積内訳書の単価という項目で記載されますが、主に2通りの記載方法があるので紹介します。

1つめは、材料費・労務費・経費を分けた状態で単価が記載されるものです。下図では、コンクリート工事の内訳を紹介したものですが、鉄筋工事、鉄骨工事、各種設備工事(電気・給排水衛生・空調換気)なども、このように分けて単価が記載されることが一般的です。

コンクリート工事の見積内訳書の事例。
材料費・労務費・経費を分けた状態で見積が計上されています。工事に必要になる材料費、施工手間などの労務費、工事で使用する機械の費用などの経費などが分けて記載してあります

2つめは、材料費・労務費・経費が組み合わさった状態で単価が記載されるもので、複合単価とも呼ばれます。下図では、石・擬石工事を例に紹介していますが、その他の仕上げに関わる工事でも、このように複合単価で記載されることが多いです。また、改修工事や、規模の小さい工事、見積もり期間が短い場合などの場合も複合単価が用いられる場合もあります。

石・擬石工事の見積内訳書の事例。
材料費・労務費・経費が組み合わさった状態で見積が計上されています。床、階段など部位ごとに見積が計上されており、各項目ごとに材料費・労務費・経費が含まれている状態です

こうした見積内訳書に記載される単価の記載方法を踏まえた上で、各種工事の個別の費用である材料費・労務費・経費についてそれぞれ詳しく紹介します。

材料費|個別の工事で必要となる材料にかかる費用

材料費とは、実際に建物を建設する際に行う基礎工事や仕上工事など、個別の工事で必要となる材料にかかる費用になります。

例えば、仕上工事の中のタイル工事では、タイルはもちろんこと、それを取り付けるための接着剤や金物などの副資材も材料費に含まれます。また、材料費には工事現場に材料を届けるための運搬費なども含まれます。

材料は、海外から輸入する必要があるなど、さまざまな要因、時勢によって価格の変動が起こります。各材料の市場価格を工事ごとにまとめた刊行物が定期的に出版されているため、それらを確認することで材料費の相場を確認することができます。

材料費は、その市場価格を確認することで、金額の妥当性を確認できます。

労務費|工事現場の作業員や職人に支払う給料や賃金、手当などの費用

労務費は、直接工事に関わる労働者である、工事現場の作業員や職人に支払う給料や賃金、手当などを指します。賃金以外にも賞与や各種手当、個人負担分の法定福利費なども含まれています。

労務費は、労働者の供給状況によって変動します。例えば、リーマンショック直後では労働者が過剰供給となりましたが、東日本大震災以降は労働者不足となり、労務費が高くなる傾向にありました。昨今だと、新型コロナウイルスによる影響でも変動がありました。

民間工事における労務費は、需要と供給のバランスによって変動するものであり明確な基準はありませんが、公共工事では、積算に使用する労務費を国土交通省が定めており、公共工事設計労務単価として毎年発表されています。

労務費は、その相場を確認することで、金額の妥当性を確認することができます。

経費|工事を施工するために必要となる材料費や労務費以外の費用

経費は、工事を施工するために必要となる材料費や労務費以外の費用を指します。具体的には工事で使用する機械費(機械の使用料や燃料など)や、専門工事会社の利益などが含まれます。

経費は材料費や労務費と違い、時勢によって相場が変動するというよりは、工事内容によって変わってきます。

経費は、工事内容を確認することで、金額の妥当性を確認できるようになりますが、様々な要因が含まれる項目であり、理解するには、より専門的知見が必要になります。

工事見積書の内訳とは?
主な工種・項目と概要を紹介

工事見積書に記載される内訳は、建設工事の工種ごとに分かれます。建築工事の工種は、主に仮設工事、躯体工事、仕上工事、設備工事、外構工事に分かれます。下の図は、各工事の平均的な工事費に対して占める割合を示しています。

アクアが関わった建築プロジェクトの工事費の構成比をまとめたグラフ。
躯体工事と仕上工事が工事費の3割を占めることがわかります

また、これら工事はさらに以下の工種に細分化します

建設工事における主要な工種の分類イメージ。
躯体工事、仕上工事、設備工事、外構工事、仮設工事、諸経費はさらに細かな工種に分類されます
躯体・土工事
  • 土工事
  • 山留工事
  • 杭(地業)工事
  • コンクリート工事
  • 型枠工事
  • 鉄筋工事
  • 鉄骨工事
  • PC工事
  • 免震・制振工事
仕上工事
  • 組積(既成コンクリート)工事
  • 防水工事
  • 石工事
  • タイル工事
  • 木工事
  • 金属工事
  • 左官工事
  • 金属製建具工事
  • 木製建具工事
  • ガラス工事
  • 塗装工事
  • 内装工事
  • 雑工事
  • 仕上げユニット工事
設備工事
  • 電気設備工事
  • 給排水衛生設備工事
  • 空調換気設備工事
  • 昇降機設備工事
  • 機械駐車設備工事
外構工事
  • 舗装工事
  • 囲障工事
  • 排水工事
  • 植栽工事
  • その他
仮設工事
  • 共通仮設工事
  • 直接仮設工事
諸経費
  • 現場管理費
  • 一般管理費

建築工事の主な工種を理解しておくと、工事見積書の内訳をより把握しやすくなります。ここでは、工事見積書に記載されている内訳について、工種別に紹介していきます。

仮設工事|共通仮設工事や直接仮設工事など

仮設工事とは、建築工事を円滑に行なうために設ける一時的な施設や設備などに関する工事のことを指します。

仮設工事は建設工事期間中の一時的なものであるため、原則として建設工事の終了とともに撤去されます。

仮設工事は全体の建築工事費の7%程度を占めます。以下の表は、主な仮設工事の種類・内訳の説明をまとめています。

仮設工事の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
共通仮設工事 現場事務所や作業員詰所、仮設トイレ、揚重機など工事を円滑に進めるために設置される設備に要する費用 建設地の工事環境や建物規模により計画が変わり工事費も変動
直接仮設工事 足場や養生、墨出し作業など建設作業を行うために建物自体に直接必要な仮設設備に要する費用 特に建物規模・形状により工事費が変動

躯体工事・土工事|土工事や山留め工事、鉄筋工事、コンクリート工事など

躯体工事とは、建物の骨組みとなる構造体をつくる工事のことです。

躯体というのは一般的に、建物の骨組みとなる構造体のみを指しますが、躯体工事には、コンクリート工事や鉄筋工事、鉄骨工事などの他に、それに付随して、土工事・山留工事・杭工事なども必要になってきます。

躯体工事は全体の建築工事費の30%程度を占めます。主な躯体工事の種類・内訳の説明は下記になります。

躯体工事・土工事の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
土工事 建物の基礎・地下を構築するための地盤の掘削、掘削地盤面の整備、基礎・地下構築後の埋戻し等に要する費用 建設地の工事環境により車両の大きさが左右され工事費が変動
山留め工事 建物の基礎・地下を構築するための地盤掘削において、掘削した壁面の崩壊を防ぐための施設に要する費用 地盤の状況や掘削の深さ等により工法等が左右され工事費が変動
杭工事 建物の沈下や傾きを防ぐため、地盤面下に建物を支えるための円柱状の柱(杭)を構築する費用 建設地域により杭の長さが変わり工事費が大きく変動
鉄筋工事 建物の構造体の崩壊を防ぐために、コンクリート内に補強材として棒状鋼材を組み込む費用 建物規模・構造形式等により使用材料が変わり工事費が変動
コンクリート工事 強固な固さを保ち建物を支えるコンクリートによる構造体構築に要する費用 建物規模・構造形式等により使用材料が変わり工事費が変動
型枠工事 コンクリートによる構造体形成のための関板を設置するのに要する費用 建物形状の複雑さや仕上に関連した使用材料の違いにより工事費が変動
鉄骨工事 建物の構造体を鉄骨で構築する費用、又、鉄骨階段や付帯鉄骨(外装下地、囲い、各種架台等)の設置費用 建物規模・構造形式等により使用材料が変わり工事費が変動

仕上工事|防水工事や石工事、金属工事、内装工事など

仕上工事とは、建築物の内部や外部を仕上げていく工事のことです。

仕上工事には、内装工事やガラス工事など建物の目に見える範囲での工事に限らず、防水工事など仕上げによって目に見えない範囲の工事なども含まれます。各仕上工事には、仕上げをしていくための、下地処理なども含まれます。

仕上工事は全体の建築工事費の30%程度を占めます。以下の表は、主な仕上工事の種類と内訳などをまとめています。

仕上工事の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
組積工事
既成コンクリート工事
コンクリートブロック、ALC版、押出成形セメント板、等の工場で作成されるコンクリート製品の設置に要する費用 設置の高さ・長さ、材料の表面仕上等により工事費が変動
防水工事 建物内に雨水等の浸入を防ぐための材料を施すために要する費用 耐用年数や断熱材の厚さ等の仕様により工事費が変動
金属工事 金属類の仕上材(金属パネル等)や金属下地材(間仕切・天井等の軽量鉄骨材)等を設置するために要する費用 材料の仕様や建物形状による設置難易度により工事費が変動
左官工事 表面仕上材の下地処理(コンクリート鏝押え・モルタル塗・打放補修等)やモルタル等による仕上を施すために要する費用 建物形状による施工難易度により工事費が変動
金属製建具工事 アルミサッシ、スチール製建具、ステンレス製建具、シャッター、自動ドア装置等を設置するために要する費用 建具形状や建具仕様により工事費が変動
ガラス工事 建具に嵌め込むガラスや手摺用ガラス、ガラス設置用シーリング、各種フィルム類等の設置に要する費用 材料の仕様により工事費が変動
内装工事 床の樹脂系仕上材・フローリング・塗床材・カーペット、壁 天井のクロス・下地ボード・断熱材、等々の設置に要する費用 材料の仕様やデザイン貼り等の貼り方の難易度により工事費が変動

設備工事|電気設備工事や給排水衛生設備工事など

設備工事とは、建物内の電気・ガス・上下水道・空調などを設置する工事のことです。

設備工事には、電気設備工事、給排水衛生設備工事、空調換気設備工事などがありますが、建物用途や規模、工事地域等の違いにより、特殊な工事も多く発生する場合があります。

設備工事は全体の建築工事費の20%程度を占めます。以下の表は、主な設備工事の種類・内訳をまとめています。

設備工事の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
電気設備工事 照明器具、スイッチ・コンセント、インターホン、テレビ共聴、電話配線、発電機、幹線等の設置に要する費用 機器の仕様、建物規模用途等による特殊性により工事費が変動
給排水衛生設備工事 衛生器具、給排水配管、給湯、ガス、消火設備等の設置に要する費用 機器の仕様、建物規模用途等による特殊性により工事費が変動
空調換気設備工事 空調用熱源機器、空調機器、空調ダクト、換気設備機器、排煙設備機器、床暖房機器、自動制御等の設置に要する費用 機器の仕様、建物規模用途等による特殊性により工事費が変動
昇降機設備工事 エレベーター、エスカレーター、ダムウェーター等の設置に要する費用 機器の仕様、建物規模用途等による特殊性により工事費が変動
機械駐車設備工事 各種機械駐車機器の設置に要する費用 機械種類、駐車台数、設置場所により工事費が変動

外構工事|舗装工事や囲障工事、植栽工事など

外構工事とは、建物以外の敷地内の外回りを整備する工事のことです。

外構工事には、通路や広場等の舗装工事、敷地周囲のフェンスや門扉などの設置工事、雨水等の排水のための工事、植樹等の植栽工事などがあります。

外構工事は全体の建築工事費の2%程度を占めます。以下の表は、主な外構工事の種類・内訳の説明をまとめています。

外構工事の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
舗装工事 敷地内道路、駐車場、通路、広場等の地面に、石・アスファルト・インターロッキングブロック等を設置するのに要する費用 舗装種類、耐荷重等の仕様により工事費が変動
囲障工事 敷地廻りや敷地内にフェンスや門扉、塀等を設置するために要する費用 フェンスや塀の高さ・形状、材質の種類等の仕様により工事費が変動
排水工事 雨水等を排水するための側溝や排水桝、それらに付随するグレーチング等を設置するために要する費用 既製品、現場造成、側溝蓋の種類等の仕様により工事費が変動
植栽工事 敷地内緑化のための各種樹木の植樹、それに付随する客土、植栽廻りの見切・立上壁等の設置に要する費用 樹木の種類や緑化方法、配置計画等により工事費が変動

諸経費|現場経費や一般管理費など

諸経費とは、直接工事費と共通仮設費以外の工事に必要となってくる費用で、建設会社の維持管理や運営のための費用になります。

諸経費には、直接現場を運用していく上で必要となる費用である現場管理費と建設会社が業務を行っていく上で必要となる費用である一般管理費があります。

諸経費は全体の建築工事費の12%程度を占めます。以下の表は、主な諸経費の種類・内訳の説明をまとめています。

諸経費の種類・内訳 概要 工事費の特徴・ポイント
現場管理費 建設会社の現場従業員の給与・諸手当、労務管理費、法定福利費、保険料、事務用品費、租税公課、通信費、交通費、等 最近の目安として純工事費に対して6.5%前後程度だが建設会社により相違がある
一般管理費 建設会社本支店従業員給与・諸手当、法定福利費、事務用品費、租税公課、通信費、交通費、等 最近の目安として工事原価に対して5%前後程度だが建設会社により相違がある

工事見積書の妥当性を検証する際に、
プロが確認している5つのポイント

ここまで一般的な工事見積書の見方や確認方法について紹介してきましたが、実際に工事費の妥当性を確認する際には、発注者の工事費予算との乖離があるのかどうかも含め、より細かい確認・検証を行います。

このパラグラフでは、これまで多くのプロジェクトの工事費の妥当性検証を行ってきた経験を踏まえて、コストのプロがどのような検証を行っているのかを5つのポイントに整理して紹介します。

工事見積書の主要な検証方法を紹介しているので、コストのプロの視点や、プロに依頼した際にどのような観点で検証しているのかなど、具体的なイメージをつかんでいただけます。

ポイント1:各材料の実勢価格の変動を把握し、現時点での工事費の傾向を知る

建設工事に使用する各材料の実勢価格の変動を把握することで、工事費への影響を確認することができます。

実勢価格とは、実際に市場で取引される価格のことですが、マクロ経済や海外情勢を含めたさまざまな要因により変動します。

例えば、現在アジアの新興国で開発が進んでいますが、多くの建物が建設されるため、鉄骨の需要が伸びており、それに伴って日本における鉄骨の価格も上昇します。また、最近は人手不足により労働者の確保が難しくなり、労務費も上昇傾向にあります。

下図は、工事費を検証するための基礎資料として、アクアにて建築で使用する各材料の価格の推移をまとめたものです。価格の変動が激しいものもあれば、比較的安定的な値動きするものなど、各材料毎に値動きの傾向があり、一律でないことがわかります。

刊行物など、各種公表値を元に作成した各材料の価格の推移をまとめたグラフです。
鉄屑、冷媒用鋼管、型枠用合板などの価格の推移を表していますが、各材料ともに価格が日々変動していることがわかります

個別の単価の変動に加え、全体の工事費の変動も把握しておく必要があります。下図は、モデルとなる建物の工事費が、どのように変動するのかを毎月試算したものです。

アクアが想定したモデル物件の建設工事費の推移のグラフです。
青が共同住宅のモデルで、緑が事務所のモデルになります。
材料費や労務費の実勢価格が変動することで、全体の工事費も大きく変わります

材料費や労務費などの実勢価格を把握することで、現時点での工事費の傾向を知ることができます。

ポイント2:見積内訳書の単価を分解し、実勢価格との比較・検証を行う

見積内訳書の単価を、材料費・労務費・経費などに分解することで、実勢価格と比較・検証できるようになります。しかし、見積内訳書の単価が複合単価で記載されている場合、そのままでは実勢価格と見比べることができません。

下図の石・擬石工事の見積内訳書の床の単価は34,900円となっていますが、この単価は、床に使用する石やそれを貼るためのセメントなどの材料費、床を施工するための労務費やその他経費が含まれる、「複合単価」となっています。

石・擬石工事の見積内訳書の事例。材料費・労務費・経費が組み合わさった複合単価で見積が計上されています。アクアでは、この組み合わさった状態の単価を、逆に材料費・労務費・経費へと分解することで、複合単価の妥当性を検証します

この複合単価を逆に材料費・労務費・経費へと分解し、それぞれを実勢価格と比較することで複合単価の妥当性を検証することが可能になります。比較対象とするエビデンスの例としては、材料費であれば各材料実勢単価をまとめた刊行物、労務費であれば、国土交通省が発表している公共工事設計労務単価などが挙げられます。また、双方ともに他の類似案件での単価も重要な比較材料となります。

ポイント3:見積内訳書の数量を精査し、工事費に影響しうる計上漏れ・ミスを発見する

見積内訳書に記載されている数量を検証することで、計上漏れや重複計上などのミスを発見できることがあります。数量が過剰に計上されている場合は、工事費削減につながる可能性もあります。

工事見積書には、各工事の単価の他に、数量が記載されています。数量は建物の規模が大きくなると、万単位、10万単位と大きな単位となり、多少の違いでも大きな金額差となることがあります。

間違いの原因としては、設計図を計測する際の計測ミス、内訳書への転記ミス、内訳書上の計算ミス等が挙げられます。また、概算時や精概算時等、図面精度が低い状態での数量は過剰な余裕が見込まれる場合があるため、特に数量チェックは重要です。

下図は、工事見積書の妥当性検証の一環で、発注者から提供された図面などを元に、アクアにて数量を算出して比較・検証したものです。

数量比較検証資料の参考(外部仕上)

数量比較検証資料の参考(内部仕上)

このように見積内訳書の数量を精査することで、数量の適正性が確認でき、工事費削減につながるケースもあります。

ポイント4:工事条件や施工計画を確認し、工事費への影響を精査する

工事費は、同じような用途や規模の建物の工事であっても、工事条件により大きく変動するため、工事見積書がどのような工事条件・施工計画を元に作成しているかを確認する必要があります。

例えば、建設地周辺の道路が狭く大型車両での通行が困難と判断された場合、小型車両を使用した工事となり、資材の運搬や掘削した土の搬出等の作業効率は低下し、手間が余計にかかることとなります。この場合、労務費が高く計上され、全体の工事費もそれに伴い高くなります。

見積条件書のイメージ。見積条件書には見積に反映された工事条件等が記載されています

工程表のイメージ。工事条件に沿った工程計画となっているか確認する必要があります

また、建設地の近隣の状況から、工事に時間制限等が設けられた場合、通常よりも工事期間(工期)が延び、それに伴い仮設資材のリース期間や建設会社現場従業員の配属期間も伸びて、結果的に全体の工事費が高くなります。

このように、工事見積書には様々な工事条件が反映されています。そのため、工事見積書の妥当性を確認するためには、工事条件と施工計画を確認することが重要となります。

ポイント5:建物の形状による、工事費への影響を確認する

建物の形状が、高コスト要因になっていないかを確認する必要があります。計画当初に算定された工事費予算は、坪単価や類似物件などの参考データから算出されますが、標準的な形状・仕様を元にされていることが多く、設計過程において特殊な形状や平面計画が採用された場合には、当初の工事費予算を大きく上回る工事費となる可能性が高いためです。

例えば、同じ用途・同じ延べ床面積の建物であっても、低層の建物よりも高層の建物の方が工事費が高くなる傾向があります。建物が高層になると、構造の強度がより求められるため、躯体にかかるコストが割高になりやすく、さらに、法的に求められる設備のスペックが高くなるため、設備もコスト高になりやすいです。

同一の規模・用途であっても、建物の形状や特性によって、
工事費に差が出てくるので注意が必要です

このように、同じ用途・同じ延べ床面積の建物であっても、建物形状の違いにより、計画内容は変わります。工事見積書の妥当性を検証するためには、建物形状や計画をよく理解した上で、確認する必要があります。

工事費の妥当性検証・
コストマネジメントの事例

アクアが支援した工事費の妥当性検証・コストマネジメントの事例・実績を紹介します。

大規模商業施設、旅館・ホテル改修、都市型商業施設などを例に、個別のプロジェクトでどのような検証を行っているのかなど、具体的なイメージをつかんでいただけます。

事例1:大規模商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントの事例

大型商業施設の新築プロジェクトです。アクアは基本設計・実施設計段階から工事金額合意までのコンストラクションマネジメントを行いました。

お客様からは、施工者が提示する工事費について、第三者の立場からの妥当性の検証を求められました。アクアは、施工者見積の検証・精査及びヒアリング、アクア算出の工事費見積との比較検証、更にVECD提案を実施しながら、関係者間でのコスト方針の状況把握と問題の共有を行い、お客様の予算内での工事完了を実現しました。

建設会社から提出された見積書の内容に関する確認書(質疑書)のイメージ。見積書の疑問点を質疑書として建設会社へ提示し、見積もりの妥当性を検証します

大規模商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果

大規模商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果は以下の通りです。

  • 設計施工者が決定している状況での工事費の妥当性の検証を実施
  • 施工者から提出された「概算」「準精算」「精算」の各段階の見積に対して検証を行い、施工者との質疑応答形式による協議を実施
  • アクアで概算工事費の算出を行い、施工者の見積と比較検証を実施
  • 「概算」段階では、見積項目の考え方や単価の構成、該当範囲の確認など、不明瞭な点を施工者にヒアリングし認識の相違点を明確した上で見積に対する目線合わせを実施
  • 「準精算」段階では、詳細な仕様・数量、図面の解釈の相違点を抽出し、VECD提案を実施
  • 「精算」段階では、最終調整として、工事項目の重複や数量の確認を実施
  • プロジェクトの状況に沿った段階的かつ継続的なコストマネジメントにより、当初より約5.5%の工事費低減を実現

大規模商業施設新築工事における工事費の低減率を表したグラフ。
一番左側の精算見積金額からの見積精査後・VECD後の金額推移を示しています

事例2:ホテル改修工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントの事例

既存のホテルにおいて、改修工事を行ったプロジェクトです。アクアは実施設計段階から竣工までコストマネジメントを行いました。

見積段階から施工段階を通して、建設会社から提示された見積検証とともに、工事範囲・施工方法等の検討も行いました。また、建設会社との協議により工事費低減へとつなげ、お客様の予算内での工事完了を実現しました。

工事項目を精査した表のイメージ。
工事内容の検討途中でもあったため、工事項目の精査を行ってコストを最適化しました

ホテル改修工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果

ホテル改修工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果は以下の通りです。

  • 現地調査による詳細な工事範囲・施工方法等の検証を実施
  • 築年数が古い建物であったため、不燃対策・避難経路の確保・消火設備の是正等、必要不可欠となる法的な部分の改修工事を考慮しながらの工事費調整を実施
  • 新築工事よりも各工事の単価が割増傾向となる改修工事の単価を適切に把握し、工事見積書の内容の検証を実施
  • 立地条件による工事費の割増の発生を踏まえた工事内容の検証を実施
  • 工事の特性により施工段階での追加工事も多く発生したため、予算内に納めるために一つ一つを丁寧に検証
  • 見積精査、VECD提案、改修範囲の適正化等により、当初より16%程度の工事費低減を実現

ホテル改修における工事費の低減率を表したグラフ。
一番左側の精算見積金額からの見積精査後・VECD後の金額推移を示しています

事例3:都市型商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントの事例

都心に位置する商業施設の新築プロジェクトです。アクアは計画の初期段階から工事契約合意に至るまで、建築計画やコストの妥当性の検証を一貫してサポートしました。

当初の工事見積の金額は、予算よりも大幅に乖離していましたが、見積検証を行うとともに、ファサードの検討・見直しの提案や、繁華街内という施工難易度の高い立地条件での仮設計画・工事方法の検討・最適化を関係者と協議することで予算内での工事請負契約締結が実現できました。

建設会社からの見積書の内容確認書(質疑書)イメージ。
見積書の疑問点を質疑書として建設会社へ提示し、仮設計画の見直しを行いました

外装材の面積増減リストイメージ。
外装金額の低減状況を確認し、ファサードの検討・見直しを行いました

都市型商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果

都市型商業施設新築工事における工事費の妥当性検証・コストマネジメントのポイント・効果は以下の通りです。

  • 工事見積書の明細について単価や数量の精査をした上でVECDの提案を行い、目標工事金額に到達
  • 計画地が人通りの多い繁華街であるため、資材搬入の時間規制などによりコスト高となっていた仮設計画を見直し・最適化してコスト低減を実現
  • コスト高の要因となっていた外装の特注スチールカーテンウォールやダブルスキンルーバー、緑化ウォールなどについて、周辺環境や計画イメージに合わせたVECD提案を行い、工事費低減を実現
  • 見積精査やVECD提案により、当初より7%程度の工事費低減を実現

都市型商業施設の工事費の低減率を表したグラフ。
一番左側の精算見積金額からの見積精査後・VECD後の金額推移を示しています

まとめ:工事見積書の妥当性を検証し、
工事費を最適化しよう

工事見積書の内容や工事金額の内訳を把握することで、建設費のコントロールが可能になります。工事見積書の妥当性を検証し、コスト最適化を実現するポイントは以下の通りです。

  • 工事見積書とは見積書の一種で、建設工事を実施する際にかかる金額などが記載されている書類
  • 工事見積書は、見積書表紙・見積内訳書・見積条件書という、3つのパートで構成されている
  • 工事見積書の標準的な記載内容や構成を把握する事で、工事費用の全体像や内訳を確認する際のポイントがつかめる
  • 工事費の妥当性を判断するには、工事費の単価の構成を分解して把握する必要がある
  • 工事見積書の内容を精査することで、建設プロジェクトの工事費を最適化することができる

アクアは、高い技術力を活かしたコストマネジメントを通じ、お客さまの建物・施設建設コストを最適化し、プロジェクトの予算超過リスクの低減をサポートいたします。建設プロジェクトの予算立案や概算工事費算出など、コストでお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。

工事見積書の妥当性検証・
コストマネジメントに関する事例・リンク

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