不動産開発における事業企画とは、不動産開発事業の初期段階で、事業構想や基本計画を立案する一連のプロセスを指し、主に市場調査やニーズ分析、土地条件・法規制の確認、建築計画の概略検討、事業収支計画の策定などを行います。

不動産開発において、初期段階で精度の高い事業企画を立案することで、事業の採算性を客観的に評価し、潜在的なリスクを事前に洗い出すことが可能となり、その後の設計・施工・運営を円滑に進められます。

この記事では、不動産開発における事業企画、事業企画の流れ、事業企画の業務概要・サポートイメージ、不動産開発における事業企画の導入事例などを網羅的に紹介しています。

不動産開発の事業企画に関する具体的なソリューションを把握したい方や、プロジェクト全体のサポートを検討されている方は、「事業企画・PM/CMサービス紹介ページ」をあわせてご覧ください。

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不動産開発の事業企画とは?

不動産開発における事業企画とは、不動産開発事業の初期段階で、事業構想や基本計画を立案する一連のプロセスを指します。

不動産開発は、土地や既存建物に新たな価値を創出するため、企画・設計・建設・販売・運営といった工程を経て進められます。なかでも事業企画では、市場調査やニーズ分析、土地条件・法規制の確認、建築計画の概略検討、事業収支計画の策定などを行います。

この段階で計画の実現可能性や採算性を十分に検証することで、その後の設計・施工・運営を円滑に進められます。逆にここでの方向性が不十分だと、後工程で大きな修正や損失が発生する可能性があります。

不動産開発における一連のフェーズのイメージ。事業企画は、不動産開発事業の初期段階で、事業構想や基本計画を立案するフェーズを指します

本記事では、不動産開発の初期段階にあたる事業企画フェーズや具体的な事例などをご紹介します。

不動産開発における事業企画の流れについて

不動産開発における事業企画の流れは、基本計画策定をゴールとし、不動産基礎調査・マーケット調査、事業不動産の有効活用検討、建築計画概略検討(ボリュームチェック)、事業収支計画の策定と検討、の4つに分けて進められます。基本計画の策定までにどのような流れで具体化していくかを知っておくことで、プロジェクト全体をスムーズに進めることが可能になります。

多くの場合、事業用地の選定や市場調査と並行して事業収支計画を策定し、事業の実現性を検証していきます。この企画段階で固まった計画が、続く設計・工事段階における全ての判断の基礎となります。

基本計画策定までの事業企画の流れのイメージ。不動産調査で市場性や建築可否を把握し、有効な活用法を検討します。その後、建築規模を想定した上で事業の採算性を見極めます。

不動産開発事業における事業企画の業務概要・サポートイメージ

不動産開発事業における事業企画の業務概要を、アクアのサポート内容を元にご紹介いたします。

建設プロジェクトの品質マネジメントにおける、アクアの代表的なサポート内容の一部を紹介します。事業企画段階における各種サービスの概要と提供している帳票などから、具体的な支援内容のイメージをつかんでいただけます。

不動産基礎調査・マーケット調査|建築の可否と事業性評価をサポート

不動産開発事業を成功に導くには、法令やインフラ等の物理的な建築可否に加え、市場の需要を見極めた事業性の事前リサーチが極めて重要です。

アクアでは、接道条件・権利関係といった基礎調査で建築の可否を判断します。さらに、賃貸マンションであれば想定稼働率、ホテルであれば客室稼働率(OCC)・平均客室単価(ADR)などのマーケット調査も実施し、お客様の事業性評価を的確にサポートいたします。

不動産基礎調査の資料と報告書のイメージ。調査段階において、接道条件や下水道の状態、権利関係などの調査を実施し、建築の可否を判断します

事業不動産の有効活用検討|売却・賃貸等の最適解を検証によって提示

不動産開発事業の収益性を最大化するためには、マーケット調査に基づき、売却や賃貸といった複数の活用手法を比較検討し、最適な事業計画を策定することが不可欠です。

アクアは、不動産売却、買い換え、賃貸活用などの選択肢を多角的に比較検討し、お客様にとって最適な事業不動産の活用手法をご提案します。さらに、事務所ビル、工場、倉庫など企業が保有する不動産について、見直しや利活用を含めたCRE戦略の立案まで、専門的な知見で総合的にサポートします。

事業方式検討比較のイメージ。アクアは、不動産売却、買い換え、賃貸活用などの選択肢を多角的に比較検討し、最適の活用手法をご提案します
CRE戦略における保有施設の検証事例。競合となるビルとの比較を踏まえたうえで、最新の建設コスト動向を反映した精度の高い検証を実施します

建築計画概略検討(ボリュームチェック)|建築可能な建物規模を具体的に検証

不動産開発事業の成否は、企画段階における事業収支計画の精度に大きく左右されます。そのため、対象となる土地で建築可能な建物の規模を具体的に想定することが極めて重要です。

アクアでは、事業企画段階で、建設可能な建物の具体的な規模を把握するための概略検討(ボリュームチェック)を行います。マンションであれば住戸数、ホテルであれば客室数まで具体的に想定することで、より精度の高い事業収支計画の策定をサポートします。

ボリュームチェックのイメージ。不動産基礎調査の結果を踏まえ、平面図・断面図・立面図などを作成して具体的に建築可能な規模を想定します

事業収支計画の策定と検討|事業全体の収入と支出を正確に把握し、事業性を確認

不動産開発事業では精度の高い事業収支計画の策定が不可欠です。事業全体の収入と支出を正確に把握し、採算性を正確に見極めることが重要となります。

アクアは、ボリュームチェックに基づき正確な建設コストを算出します。さらに、不動産保有に関わる諸経費や税金といった支出を専門家の視点から精査し、想定収入と比較検討することで、精度の高い事業収支計画書を作成し、お客様の的確な事業判断をサポートします。

事業収支計画書(左)と事業性検討資料(右)のイメージ。事業収支計画書を作成した上で、条件整理やリスクの洗い出し、コストや工期の妥当性を評価し、事業性や採算性を考慮した計画の立案を支援します

不動産開発における事業企画の事例

不動産開発における事業企画の導入事例をご紹介します。事業企画が必要になった背景やその活用方法をご覧いただけます。

不動産開発事例1:バス営業所の統廃合の事業企画の事例

交通事業者のバス営業所の統廃合に関する、長期的な事業企画の策定とプロジェクトマネジメントの実施事例です。お客様は、既存営業所における設備の不具合や従業員ニーズとの乖離といった課題に加え、複数年度にわたる施設設計の基準を確立するため、開発の初期段階から専門家であるアクアにご依頼いただきました。

アクアは、現地調査や関係者へのヒアリング等による課題抽出と意見集約を行ったうえで、求められる機能や品質を定義し、事業全体の指針となる事業戦略を策定しました。事業戦略の策定を通じて、お客様のニーズを確実に満たす要件を整理し、手戻りや過剰な仕様といった不要なコストの削減に貢献しました。

また、現在では、事業推進フェーズにおいて個別プロジェクトを支援しています。多数の関係者が関わる長期的な計画で見通しを立てることが難しい状況においても、コスト・スケジュール・品質の適正な確保を行うことで、円滑なプロジェクト進行をサポートしています。

バス営業所の要望事項を整理した図面のイメージ。関係者との意見集約を経て、必須機能を確保した最適な配置計画をご提案しました
個別プロジェクトのマスタースケジュールのイメージ。基本計画から竣工まで一貫して支援しています

不動産開発事例2:集合住宅の新ブランド立ち上げにおける標準仕様書策定業務

デベロッパーの集合住宅の新ブランド立ち上げにともなうアドバイザリー業務の事例です。集合住宅の新ブランド立ち上げにあたり、建設プロジェクトの豊富な実績があり、建設市場・調達コストに精通しているアクアにご依頼いただきました。

アクアは、ブランド品質を維持しつつ、設計者や施工者から最適な提案を引き出すため、事業の根幹となる標準仕様書や目標スペック表の作成を支援しました。これらを基準としながら、一部の仕上げ、設備、建具などは予算やグレードに応じてグレードアップが可能なようにすることで、柔軟な企画が可能な仕様書の策定を行いました。

物件ごとの品質のばらつきをなくし、ブランドとして一貫した品質・性能を確保すると同時に、多様な顧客ニーズにも応えられるオプションを用意することで、ブランド価値の向上と事業の成功に貢献しました。

集合住宅の新ブランド立ちあげにおける標準仕様書のイメージ。項目を細分化して明確な基準を設けることで、どの物件でも一貫したクオリティを実現します
設備や建具等のアップグレード箇所を検討するための資料のイメージ。予算や条件に合わせ、費用対効果の高いプランを提案できるようにしています

不動産開発事例3:大規模再開発の複数棟の事業企画・予算策定支援の事例

ホテル、商業、オフィス、住宅など複数棟からなる大規模再開発において、アクアがすべての工事費概算を算出し、発注者の事業計画策定をサポートしたプロジェクトです。デベロッパーが大規模再開発へ参画するにあたり、事業性や建物構成・収益性などを試算する目的で工事費概算を算出しました。

事業企画段階であったため、マスタープランやその面積表、簡単な各種仕様イメージなど、限られた資料で工事費予算を算出する必要がありましたが、アクアのもつ各用途のバックデータを利用しながら、設備や内外装の仕様を設定し、超概算を算出しました。

アクアで作成した工事費概算が当初デベロッパーが自社で試算した費用よりも大幅に高くなったため、作成した工事費概算を元に、組み込む用途やその床面積を精査し、建物の規模・用途を適正に設定することができ、より現実的な事業計画策定を行うことができました。

概算を算出できるように、アクアにて用途ごとに設備仕様も含めて仮に計画し、仕様をまとめました
概算を算出できるように、アクアにて用途ごとに建物の内外装の仕様やグレードを仮で計画しました

まとめ:不動産開発において、初期段階で精度の高い事業企画を立案することが重要

不動産開発において、初期段階で精度の高い事業企画を立案することで、その後の設計・施工・運営までを円滑に進め、事業全体の収益性・効率性を高めることができます。この記事のポイントは以下の通りです。

アクアは、不動産基礎調査からマーケット分析、ボリュームチェック、収支計画の策定までを一貫してサポートします。建設プロジェクトの事業企画でお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。

アクアでは、より詳しいサービスの紹介や実際に今お抱えのプロジェクトに対して、無料でご相談をお受けしています。お客さまの状況に合わせ柔軟な進め方をご提示いたします。お気軽にご相談ください。

不動産開発の事業企画に関する事例・リンク

サービスページ「事業企画・PM/CM」

建設プロジェクトに関わる事業者・発注者向けに、事業企画・PM/CMサービス内容をまとめたページです。不動産開発における事業企画・事業収支計画の立案支援やプロジェクト運営支援、スケジュールマネジメント、コストマネジメント、発注・調達マネジメントなどのサポート内容や、CM方式を導入した事例、導入検討に役立つダウンロード資料もご覧いただけます。

サービスページ「建設コスト最適化・コストマネジメント」

CMを活用して建設プロジェクトに最適な発注方法を選定しコストを最適化するコストマネジメントのサービスを紹介しているページです。事業企画段階における概算工事費の算出から、設計段階でのVE提案、施工者選定支援など、各段階でのサポート内容をご覧いただけます。

コンストラクションマネジメントとは?費用、契約、大手CM会社の特徴・選び方を紹介

建設プロジェクトの発注者の支援を行うCM(コンストラクションマネジメント)方式について紹介しているページです。CM方式の概要、導入のメリット、CM会社の選び方、費用の算出方法や相場、CM活用事例などを紹介しています。

概算工事費とは?種類や作成方法、予算超過時の対応方法、検証事例を紹介

プロジェクトの事業や工事費の見通しを立てるために重要な概算工事費について解説したページです。概算工事費の概要や種類、精度の高い概算工事費作成のためのポイントや注意点、概算工事費算出・活用のポイントや効果などをわかりやすく解説しています。